ボートル・スケールとは — 街の近くで暗い空を見つける方法
ボートル・スケールの9つのクラスをやさしく解説。各クラスで何が見えるか、自分の空のクラスの調べ方、暗い空まで街からどれだけ離れればよいか。
大都市の中心部で見える星は20〜30個ほど。そこから100km離れると数千個になり、空を横切る天の川が現れます。空そのものは同じで、違いを生んでいるのは 光害 だけです。これを感覚ではなく物差しで測るために、天文ファンは ボートル・スケール を使います。9つのクラスの意味と、自宅の近くで暗い場所を見つける方法をまとめます。
ボートル・スケールとは
このスケールは、アメリカの観測家ジョン・ボートルが2001年に雑誌『Sky & Telescope』で提案したものです。夜空を 9つのクラス に分け、1は完璧に暗い空、9は大都市中心部の空を表します。
最大の長所は手軽さです。機材はいりません。クラスは肉眼で見えるものから判定します。天の川は見えるか。その中に濃淡がわかるか。地平線近くに街明かりはあるか。
9つのクラスをやさしく
| クラス | 空のタイプ | 見えるもの |
|---|---|---|
| 1 | 完璧に暗い空 | 天の川で影ができる。黄道光と対日照が見える |
| 2 | 本当に暗い空 | 天の川の複雑な構造が見える。雲は星空に開いた黒い「穴」としてしかわからない |
| 3 | 田園地帯 | 地平線近くにかすかな街明かり。天の川はまだ細部まで見える |
| 4 | 田園と郊外の境界 | 街の方向に光のドーム。天の川はよく見えるが、繊細な構造はわからない |
| 5 | 郊外 | 天の川は淡く、地平線近くでは消える |
| 6 | 明るい郊外 | 天の川は天頂付近でかろうじてわかる程度 |
| 7 | 郊外と市街地の境界 | 空は灰色で、天の川は見えない |
| 8 | 市街地 | 空はオレンジ色か灰白色。明るい星座しかたどれない |
| 9 | 大都市の中心部 | 見えるのは月、惑星、ごく明るい恒星がいくつか |
実用上の境目は クラス4と5のあいだ にあります。クラス4以下の暗い空では天の川がしっかり見え、流星群は実力をほぼ出し切り、淡い星雲も小さな望遠鏡で楽しめます。クラス5以上の明るい空では、これらが急速に失われていきます。
ボートル、SQM、限界等級
ボートルのクラスと並んで、よく使われる数値がもう二つあります。
SQM — 1平方秒角あたりの等級で表した空の明るさです。専用の測定器で測るか、衛星データから算出します。数字が 大きい ほど空は 暗く、22前後が地球上での限界、18以下は都市の中心部です。
限界等級 — 天頂付近で肉眼で見える最も暗い星の等級です。市街地では4等以下、暗い空では7等以上まで見えます。
| ボートルのクラス | SQM | 限界等級 |
|---|---|---|
| 1 | 21.99〜22.0 | 7.6〜8.0 |
| 2 | 21.89〜21.99 | 7.1〜7.5 |
| 3 | 21.69〜21.89 | 6.6〜7.0 |
| 4 | 20.49〜21.69 | 6.1〜6.5 |
| 5 | 19.50〜20.49 | 5.6〜6.0 |
| 6 | 18.94〜19.50 | 5.1〜5.5 |
| 7 | 18.38〜18.94 | 4.6〜5.0 |
| 8〜9 | 18.38 未満 | 4.5 以下 |
差は小さく見えますが、これは対数スケールです。22等の空は18等の空よりおよそ 40倍暗い のです。
自分の空のクラスを調べるには
地図で。 いちばん早いのは 光害マップ です。世界中のどの地点でも、地図をタップするだけでボートルのクラス、SQM、限界等級がわかります。
自分の目で。 月のない晴れた夜に、まず目を暗さに慣らします(暗順応 には20〜30分かかります)。そのうえで次の点を確かめてください。
- そもそも天の川が見えるか — 見えるならクラス6かそれより良い空です。
- 天の川が地平線まで届いているか — クラス4かそれより良い空です。
- こぐま座の小びしゃくの星がいくつ見えるか — 7つすべて見えればクラス4〜5かそれより暗い空、明るい3〜4個だけなら市街地です。
どれくらい離れればよいか
街の規模によります。目安は次のとおりです。
- 人口10万人までの街 — 街はずれから10〜20kmでクラス4になります。
- 人口50万〜100万人の都市 — 30〜60km必要です。
- 東京クラスの巨大都市 — 少なくとも100〜150km。それでも地平線の上には光のドームが残ります。
クラス1〜2は人口の多い地域ではほとんど見つかりません。山岳地帯や離島、砂漠、高緯度の原野まで出かけることになります。とはいえ、無理に追い求める必要はありません。クラス7から4への変化は、4から2への変化よりずっと大きい からです。
地図での場所の選び方
- その地点だけでなく、周囲も見る。 南に30kmのところに街があれば、頭上が暗くても南の空は明るくなります。街の光のドームが 背中側 に、つまり見たい方向の反対側に来るように場所を選びましょう。
- 地平線が開けた場所を探す。 野原、湖畔、丘の上。まわりの森は街灯を遮ってくれますが、低い天体も隠してしまいます。
- 近くの明かりを避ける。 駐車場にぽつんと立つ街灯や、ヘッドライトが行き交う幹線道路は、遠くの街よりも大きな害になります。
- アクセスを確かめる。 10月の夜に車でたどり着けない暗い場所は役に立ちません。昼間のうちに下見をしておきましょう。
- 月と天気を確認する。 満月はクラス3の空をクラス6〜7に変え、雲はすべてを台無しにします。月齢と月の入り時刻は 月のページ、層別の雲量と夜の総合スコアは 星空の天気予報 でわかります。
どの空で何を見るか
すべての天体に暗い空が必要なわけではなく、観察のたびに街を出る必要もありません。
- クラス7〜9、市街地: 月、惑星、二重星、ISSの通過。光害は妨げになりません。
- クラス5〜6、郊外: 明るい星団、とくに明るい流星、オリオン大星雲。
- クラス3〜4、田園地帯: 天の川、本来の姿の流星群、肉眼で見るアンドロメダ銀河、双眼鏡で見る星雲。
- クラス1〜2: 黄道光、淡い銀河、妥協のない天体写真。
よくある質問
ボートル・スケールとは何ですか。
夜空の暗さを9段階で表す尺度です。クラス1は光害の痕跡がまったくない完璧に暗い空、クラス9は大都市中心部の空です。
天の川を見るにはボートルのクラスいくつが必要ですか。
クラス6でもかろうじてわかり、クラス4からはしっかり見えます。細部や暗黒帯が現れるのはクラス3かそれより暗い空です。
自分の街のボートルのクラスはどう調べますか。
光害マップを開いて自分の場所をタップしてください。ボートルのクラス、SQM、限界等級が表示されます。
SQMとは何ですか。
1平方秒角あたりの等級で表した空の明るさです。数字が大きいほど空は暗く、21.7以上なら暗い田園の空、18.4未満なら市街地です。
月は空のクラスに影響しますか。
スケールは本来、月のない空を対象にしていますが、実際には満月は街と同じくらい空を明るくします。淡い天体を観察するなら、新月前後の夜を選びましょう。
アプリ AstroTools は、いまいる場所のボートルのクラスと空の明るさを表示し、近くの暗い場所探しを手伝います。さらに雲量、月、大気の透明度を踏まえて、どの夜に出かけるべきかを教えてくれます。